入院治療
組織
入院治療が受けられるのは、入院施設のある医療機関に限られます。しかも、ギャンブル依存症専門の病棟をもつ病院は、全国に数えるほどしかありません。一方、生活しながらギャンブル依存症の克服を目指す方法には、医療機関ではなく、NPO法人などが提供する入所式の更生プログラムもあります。
活動・対応
精神科病院の入院制度は、患者本人が自分の意思で入院に同意して行われる任意入院と、本人の意思に関係なく行われるその他の入院(医療保護入院、措置入院など)に分けられます。医療保護入院や措置入院は、自傷他害の恐れがある場合において、患者やその家族を守る為に、やむを得ない措置として取られることがあります。その為、ギャンブル依存症で入院しているケースの殆どが任意入院だと考えてよいでしょう。
入院治療で用意されるプログラムは、病院によって大変多彩です。多くの場合、1日のメインプログラムには、少人数のグループに分かれて自身の体験を語り合うミーティング、複数のメンバーに1人の専門家がつき、認知(物事の考え方)の変容を目指す集団認知行動療法、ギャンブル依存症の正しい知識を身につける心理教育といった、より治療的なもので構成されています。その他にも、日替わり、あるいは週替わりで、スポーツの時間や、院内菜園などで野菜や植物を育てる時間、育てた野菜を使った料理教室、陶芸やカラオケ大会など、楽しみながらギャンブル依存症の克服を目指すプログラムも用意されています。時にはメンバーみんなで日帰り旅行や登山などに出掛けることもあります。
メリット
入院治療では、入院している機関に、他社と規律ある集団生活を送ることそのものが治療の一環になります。ギャンブル依存症者は衝動に駆られた時にギャンブルへ行き、お金が無くなったら帰るというように、ギャンブルに関しては時間の概念の薄い生活をしていることが多い為、あらかじめ決められたプログラムに沿った1日を過ごし、生活の基盤を取り戻すということが治療の第一歩となるのです。
入院治療という響きから、あまりよくない印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、実際には先に上げたプログラムのように様々な活動が用意されており、入院患者の方々が無理なく、ギャンブルから離脱できるような工夫が凝らされています。
活用のポイント
入院治療の良いところは、何より同じ境遇の仲間と一緒に克服に向けて取り組めるというところです。しかし、集団生活に抵抗のある方にはそれをよしと思えるまで、相当な葛藤があるかもしれません。
本人の意思とはいえ、今までの生活とガラリと変わった環境で過ごす訳ですから、病院の環境に馴染むまでの間は少なからず苦労を強いられる期間になるかもしれません。加えて、孤独な勝負の世界でギャンブルにのめり込んできた人は1人を好む傾向があり、特に集団での対人関係に苦手意識を持っていることが多いと推測されます。そのような人が急に見ず知らずの集団と一緒に生活をするとなると、気ままに過ごせない不自由さを感じることでしょう。入院治療の初期は環境の変化というストレスに加え、物理的にギャンブルに行けない苦しさが二重に襲ってきます。しかし、この時期を乗り越えることができたら、治療的にはとても大きな前進になります。同じように苦しんだ仲間との連帯感が生まれ、生活にも慣れることでプログラムを楽しむ余裕が出てくる頃には、ギャンブルへの執着心から解放されているのではないでしょうか。