精神療法(カウンセリング)
組織
精神療法(カウンセリング)は、主に医療機関や、私設のカウンセリングルーム、大学内の心理相談室などで行われています。
活動・対応
1回のカウンセリングの時間は45~60分程度が一般的です。通常、週に1回、あるいは隔週で定期的に通っていくものです。ただし、場合によっては3週間に1回や、月に1回といったケースもあり、担当のカウンセラーと相談して無理のない頻度で通うことが何より重要です。カウンセリングでは、相談に来た人を来談者と言う意味で「クライアント」と呼び、相談を受ける専門家を「カウンセラー」、もしくは「セラピスト」などと呼びます。
初回のカウンセリングは「初回面接」あるいは「インテーク面接」と呼ばれており、これは初回と、以降の継続面接とは意味合いが少し違う為に分けられています。初回面接では、今後どのようなカウンセリングを進めていくかという道筋を立てる作業(アセスメント)を行う必要があるのです。その為、初回はクライアントの現在の状況・状態や、問題と関係があるかもしれない生育歴など、アセスメントに必要な情報を、カウンセラーが質問していく形で集めていくことになります。
2回目以降は、原則的にはクライアント主導で勧められます。カウンセラーは、クライアントの自由な語りに共感的に耳を傾け、その時感じた事や、疑問に思ったことを素直に投げかけます。このような対話の中で、クライアントが自身の問題について気付いたり、深めていく営みがカウンセリングと言われるものです。
メリット
初回面接では、声に出しこそしなくても「話を聞いてもらうだけで何が変わるのか?」と半信半疑のクライアントが実に多いです。先の記述でもおわかりのように、カウンセリングは「実際に何をするの?」と問われると、言葉では大変説明しにくいものです。加えて、効果のあらわれ方に個人差が顕著で、何回通ったらどれくらいよくなるといった保証ができるものではありません。
それでも、信じられないかもしれませんが、初めは「連れてこられたから来ただけ」と、中々主体性が感じられなかったクライアントが、カウンセリングの回数を重ねていくうちに、「ギャンブルへの恐怖心」が芽生えてきたり、「負けるに決まっているのに大金を費やして馬鹿みたいだった」と語るようになるのです。そして回復が進んでいくにつれて、ギャンブル以外の話題も増えていき、その人の世界が広がってきた印象を受けるようになります。
これらの変化は、単に言葉、つまり語られる内容だけで感じ取るものではありません。表情の変化や声のトーン、仕草など、クライアントが発する全てで克服への過程が感じられるようになります。
活用のポイント
カウンセリングは、言葉を媒介にしたカウンセラーとの相互交流であり、対話を通して自己を見つめ直していく作業です。その為、カウンセリングにはどうしてもある程度の内省力(自分の言動や考えを振り返って考える力)が必要になってきます。内省力がないから依存症に陥っているのでは?と思うかもしれませんが、一概にそういうわけではありません。程度の差はあれ、内省力は本来誰もが持ち合わせている力です。自分の行動を顧みる力が弱いためにギャンブル依存が助長されているのだとしたら、まずは内省力を強化することを目的としたカウンセリングを行います。自分で考えることが苦手な人には、初めはカウンセラーがやや介入的にあれこれ問いかけてみたりして考える力を養っていきます。
では、カウンセリングに向かない人はいないのか?といわれると、そうではありません。まず、他の精神疾患を併発している場合、ギャンブルに限らずカウンセリングを行うこと自体が危険なことがあります。カウンセリングは自分自身を深く見つめる作業ですので、精神疾患によって”自分”そのものに確かな感覚がなくなっている時にはカウンセリングを受けることでかえって混乱してしまう場合があります。また、薬の影響で、とても眠かったり、気分が非常に落ち込んでいる感じがあったり、反対にとても元気で何でもできる感じがする場合など、いつもの自分と違う状態の中でカウンセリングを実施するのも危険を伴うといわれています。
とはいえ、カウンセリングへの適応をご自身で判断するのはとても難しいことだと思います。カウンセラーが初回面接でクライアントの状況を詳しく伺う目的のひとつは、このままカウンセリングの土台に乗せていいかを判断するためです。そこで、医療との併用の方が好ましいと判断した場合は、専門機関(精神クリニック)を紹介されることもあります。ですから、カウンセリングを受けていいのだろうが?と悩まれたら、それを含めてご自身の状態を初回面接時にカウンセラーへ伝えてください。それにより、より適切な助言がを受けられるでしょう。